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研究活動・研究会活動のトピックスを紹介します。





ELID解説資料:

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最新書籍・論文:

・書籍「ELID鏡面研削技術」台湾で発行!



最新掲載記事:

・私と機械技術「ELIDの発明:私と機械のコミュニケーション」(機械技術2007年1月号掲載)



最新技術動向:

・微細化のための研削技術の進化(日刊工業新聞2005年3月25日掲載)



最新技術開発:

・砥石に電極を用いない新しいELID研削法を開発しました。

日経ものづくり2005年2月号掲載
日刊工業新聞2004年12月16日掲載





研 究 最 前 線

ELID研削法が切り開く
超微細機械加工システム


素形材工学研究室 主任研究員 大森 整
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ELIDにより加工された非球面レンズ


dr.jpg鋳鉄で結合したダイヤモンドの砥石を使い、電気分解で目立てをしながら、精緻に研削していくELID研削法。修士課程でこの研削法を発見した素形材工学研究室の大森 整主任研究員は、原理を明らかにするだけでなく、研究会を組織し、ベンチャーを作って現場への普及をはかってきた。最近では、携帯情報機器などの高集積メモリチップや各種機能デバイスの微細加工に、ELID研削法を使うことが増えている。「現場のニーズを肌で感じられたことが、シーズ技術の開発にも繋がり、結果的に理想的な研究開発環境をもてたと思います」と語る大森主任研究員は、この研削法を基盤に究極の微細機械加工システムの確立を目指している。

●ELID研削法の発見●

1986年、修士課程にいた大森主任研究員は、たまたま研究室にあったダイヤモンド粒を鋳鉄で焼き固めた円盤状の鋳鉄ボンド砥石を、ガラスやシリコンウェハの研磨に使うという研究を始めた。50〜100ミクロン径(#140〜#325)の粗粒度のダイヤモンド粒を含む鋳鉄ボンド砥石では削れないこともなかったが、切れ味が悪く、しかもピカピカにはならなかった。そこで、ダイヤモンド粒を4ミクロン(#4000)と細かくしてみたが、今度は鋳鉄ボンドの中に埋もれて目が立たず、つるつる滑って研削できない。1年近く何も成果が出ないという状態が続いた。

「砥石をスピンドルという回転軸につけて研削するのですが、砥石が真円でないと軸がぶれるので、放電加工により砥石の精度を出そうと試みました。するとダイヤモンド粒が出てきて、目立てもできてしまったんです」

実は、後になって分かったことですが、この時放電ではなく実際には電解が発生していたのである。電解を施すと、鋳鉄の部分だけが溶けてダイヤモンド粒が出てくるのである。これで研削すると、シリコンウェハもガラスもセラミックスもピカピカに光って、表面粗さで30〜50ナノメートルを達成することができた。

電解(Electrolytic)により、常に目立てを行い(In-process Dressing)ながら研削するので、英語の頭文字をとりELID(エリッド)研削法と名づけられた(図1)。

「87年秋に学会発表をしましたが、当時は砥石で鏡面を出すのは常識外のことで、特に企業の人はなかなか信じませんでした」

それでも、90年前後から企業での実用化が始まり、大森主任研究員自身も理研に入った91年頃から、「ELID研究会」を主宰し、企業の人たちを集めて、指導や情報提供を行ってきた。98年には理研ベンチャーシステムに則って、「新世代加工システム(株)」という会社を作り、ELID研削装置の開発と販売を行っている。


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図1:ELID研削法の基礎原理


●ELID研削法の原理と特長●

さて、「なぜ、ELID研削法で鏡面加工ができるのか」を追究した大森主任研究員たちは、これが延性モード加工になっていることを見出した。

ガラスに力をかけると割れたり、欠けたりするが、これは脆性モードになるからだ。一方、木材に上手に鉋をかけると、鉋屑が流れて連続的に平滑な面が出てくる、いわゆる延性モードとなる。研削で考えれば砥粒をできるだけ小さくして、かつ浅く切り込むめば延性モードを作れるはずである。

切り込みの深さをdとすると、割れは表面エネルギーに対応するのでdの2乗に比例し、鉋屑の流動は体積の変形に相当するので、dの3乗に比例する。dが小さいほど、割れるよりも流れるほうが、より低いエネルギーで生じるようになるので、延性モード加工が可能になる。切り込みの深さは、加工する材料にもよるが、数10ナノメートル前後が分水嶺だといわれてきた。

「このような材料破壊メカニズムの理論はあったのですが、実際にはELID研削法が開発されて初めて実証できたと言っても過言ではありません。ELIDでは1ミクロン以下の無数のダイヤモンド粒を使うことができ、平均して数10ナノメートルの切り込みで削っていると考えられます」

精緻な鏡面が得られるだけでなく、連続的に目立てをしながら研削できるのもELID研削法の大きな特徴だ。鉄にダイヤモンド粒の入った砥石を使うので、電解を施すと鉄が溶けるだけでなく、いわば錆びて水酸化物や酸化物の不導体被膜ができ、そこで一旦電解が止まる。この状態で研削を続けると砥石が摩耗し、相手材料によって不導体被膜が削り取られ、再び鉄の電解が始まり、新しいダイヤモンド粒が顔を出すようになる。

この自律的な目立て制御機能はELIDサイクルとよばれており(図2)、コバルトやニッケルを結合材とする砥石でも生じる。結合材や研削液の成分や印加パルス電圧の波形や条件を選ぶことによって、ELIDサイクルのコントロールが可能で、常に必要な量の切れ味を確保することができる。

また、ELID研削法には他の加工法にはないもうひとつの特長がある。

「最近わかったのですが、ELID研削した金属表面は、他の方法で磨いたものより錆びにくいのです」

その仕組みはまだ明らかではないが、表面に保護膜ができるため、腐食に強くなるらしい(図3)。生体との親和性も高まると考えられ、生体材料やインプラントの加工法として期待されている。


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図2:ELID研削法のメカニズム
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図3:ELIDによる表面機能の改善効果
(ポテンシオスタットを用いることによる腐食特性の電気化学的評価結果。縦軸のふ動態域保持電流密度が低いほど、また横軸の孔腐電位が高いほど耐食性に優れる)


●ELID研削法の応用と展開●

ELID研削装置が加工現場に導入され始めてまもなく、大画面プロジェクター用として湾曲の大きい大口径非球面レンズのニーズが高まった。従来の鏡面仕上げ方法は、柔らかいパッドに砥粒を混ぜた液体を擦りつけながら少しずつ磨いていく方法がとられていたが、形と粗さを同時に作り出せるELID研削法が合っているのではないかとレンズメーカーとの共同研究が始まった。

この時、ELID研削法そのものは要求精度を満たす能力をもつのに、砥石を動かす機械の精度が悪くてなかなか上手くいかなかった。そこでELID用に「超精密加工システム」を作ることになった。

10ナノメートル精度の位置決めを加工中にフィードバックしながら行うレーザー干渉位置制御システムを採用し、ボールベアリングではなく空気静圧軸受けを採用したぶれの極めて少ない超精密加工装置が開発された。この装置を用いれば、サブミクロンの形状精度で従来法より短い時間で非球面レンズを加工することができ、また従来は数十ミリが限界であった加工口径を楽々100ミリ以上にまで拡大した(図4)。また装置は、非球面レンズを金型から成形して作る場合の金型加工にも使われている。

超精密加工システムは現在も進化中で、複雑な非軸対称形状の加工ができる、より自由度の大きい、より精密なシステムの開発が続いている。同時に、加工機上で対象物の精度をリアルタイムで計測し、形状の修正を即座に行える「機上計測加工法」についてもほぼ完成に近づいている。

超精密加工と同時に「超平滑加工システム」の研究も進められている。これには二つの方法がとられている。一つはダイヤモンドの砥粒をより小さくすることだ。当初5ナノメートル径のダイヤモンド粒を手に入れ、これを鋳鉄に入れたところ、細かすぎて粒同士が固まってしまい、分散させるのに苦労した。また、結合材の凹凸を5ナノメートル以下にすることは現実には難しいので、どうしてもダイヤモンド粒が均一に当たらない。

「そこで、結合材に弾性を与えようと思ったのです。表面に凹凸があっても、押し付ければ変形して平らになり、ダイヤモンド粒が均一に当たるだろうと……」

これまでの鋳鉄ボンドの「剛性砥石」から、金属に30%ほど樹脂を混ぜたメタルレジンボンドによる「弾性砥石」という逆転の発想は大成功で、現在では最大粗さ1.65ナノメートル、平均0.3ナノメートルという超平滑度を達成している(図5)。

一方で、極小ダイヤモンド粒は値段が高く、また砥石にするにも従来よりコストがかかり、この方法では普及が難しいということも明らかになった。そこで着目したのが、砥粒と研削される材料との間に生じる化学反応を利用する方法だ。これはシリカとシリコン、酸化セリウムとガラスなど特別な組み合わせで起こり、砥粒がそれ程小さくなくても非常に平滑な面を達成できる。

「これをメカノケミカル効果とよんでいますが、発見には時間がかかりました。化学反応ゆえに温度が上がらないと生ぜず、なかなか気づかなかったのです」

現在、どのようなメカニズムでこの効果が起こるのかを追究中だ。


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図4:ELIDにより加工された非球面レンズ
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図5:ELIDにより達成された超平滑加工面


●究極の超微細機械加工システムを目指す●

ミクロ寸法の部品やマシンなど、いわゆるマイクロマシンの加工には、これまで半導体技術が主に用いられてきたが、機械加工でないとできないものも数多い。

例えば、赤外線分光器やX線ホログラムなどの回折格子は、機械加工でシャープな溝を平滑に作らないと光が回折しない。マイクロ光学素子の他にもマイクロギアやマイクロモーターなどの微細機構部品、さらには生体用部品・インプラント、マイクロ電子チップなどと、超微細機械加工システムを必要としている分野は広い。

「細く、長く、薄く、微小に、精緻に、高品位に、高機能に、と極限の機械加工をテーマに掲げ、ミリ〜マイクロオーダーはもちろん、将来はナノオーダーの自在な3次元加工を目指しています。これが現在の中心課題ですね」

この研究開発のために「マイクロ加工研究会」という組織を作り、企業や研究者との連携を深め、また韓国の研究機関とも協定を結び研究交流を進めている。今までに30ミクロンと髪毛より細い工具を作ったり、卓上型の超微細加工装置を開発したりしている。例えば1ミリ以下のレンズを大きな装置で作るのは、エネルギー的にも空間的にも無駄が大きすぎるからだ。

「切るだけ、磨くだけ、形状加工だけといった卓上型加工モジュールを集めてシステムを組みます。小型に、多機能に、柔軟にという発想です(図6)」

また、ミクロンさらにはナノサイズとなれば、サイズ効果で日常生活には見られない物理現象があらわになり、そこを見極めて加工することが必要になる。

「どんな状況であれ対象物が何らかの方法で測定できれば、必ず望みの精度とサイズで加工できるというのが持論です」と大森主任研究員は言い切る。この信念に基づいた、AFM(原子間力顕微鏡)搭載の卓上型超微細機械加工システムの実現も間近い。


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図6:デスクトップ型マイクロファブリケーションツール
(『理研ニュース』2001年10月号(研究最前線)掲載)





研究会行事:

・施設見学会では、多数の参加者にお越しいただきました。
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板橋分所施設見学会の様子

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和光本所施設見学会の様子


・ELIDセミナーでは、毎回、最先端技術の話題を集め、盛会とさせて戴いております。
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セミナーの様子 1

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セミナーの様子 2


学会活動:

・精密工学会、日本機械学会、砥粒加工学会、型技術協会などの主要な関係業界の学会において、ELID関係セッションで活発に学術講演を行っております。
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学会参加の様子 1

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学会参加の様子 2


国際活動:

・生産加工関係業界の主要な国際会議におきまして、鋭意、論文発表を行っております。
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国際会議参加の様子 1

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国際会議参加の様子 2


訪問対応:

・これまでに、ELID研削技術が適用・応用および実用化されたサンプル例などを、訪問者に分かりやすく説明するためにご用意しております。
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・高校生一行がELID研削技術の見学のため訪問されました。
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・ドイツから調査団が訪問し、ELID研削を中心とした熱心な討議を行いました。
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・台湾から、中国砂輪企業公司の白副会長と国立清華大学の左教授が訪問されまし た。
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・韓国から、釜山大学の李得雨教授ら一行が訪問されました。
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・シンガポール・SIMTECHからの一行が訪問されました。
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